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なぜ CSR サイトはつまらないのか

【執筆者】 コンサルタント 前野有美 (初出:2008年3月13日)

Web サイトにおける“不人気コンテンツ”の一つが CSR(企業の社会的責任)だ。アクセス解析をしていても、読まれる確率がページビュー・ベースで1%や2%未満というのはざらにある。

昨今、さまざまな不祥事が続く中、コンプライアンスや内部統制など企業としてのあり方を厳しく問われる場面が増えるのに伴い、企業の CSR への関心が高まっている。また、企業の長期的な成長を CSR の観点から評価して投資する動きが急速に広まりつつあり、この動向が日本企業に与えるインパクトも無視できないものになってきている。さらに、企業に新たな強みを与えるキーファクターとして CSR を捉え、積極的に活用する動きがみられる。

このような背景のもと、CSR サイトは、しっかり作りこまれることが多く、かなりの予算が投じられているようだが、ステークホルダーに見られない・読まれないのでは意味が無い。このままでは、単なるお金の無駄遣いだ。

■なぜ CSR サイトは読まれないのか?

読まれない理由はいくつか考えられるが、そもそも日本人には CSR という言葉に馴染みが薄いのではないかと思われる。

CSR とは、Corporate Social Responsibility の略で、日本語にすると、「企業の社会的責任」であり、「企業が自主的に自らの事業活動を通して、または自らの資源を提供することで、地域社会をよりよいものにするために深く関与していくこと」だ。さて、CSR の意味がわかったとして、CSR サイトを見ていると、次の疑問がわいてくる。

1.どれほどの社会的インパクトがあるのか?
2.その社会貢献は、企業や事業の戦略と何の関係があるのか?
3.ステークホルダーにとってどんなメリットがあるのか?

上記3点を、どれほどの会社が説得力を持って説明できているだろうか。実際には CSR を、義務や企業の評判を上げるための施策として取り組む例が少なくない。「会社のイメージやブランド力が向上し、社員の士気も上がり、その結果、株価も上昇する」という考えの元に行う社会貢献のアピールは、しょせん対症療法的 PR にすぎず、社会的意義にも戦略的意義にも乏しい。結果として偽善的な印象を受ける。

例えば、都心の IT 企業が社会貢献活動として「富士山のごみ拾い」を選んだとしよう。「富士山のごみ拾い」という行為そのものは確かに良いことだが、その規模感での活動がどれほどのインパクトがあるか不明だし、都心の IT 企業というなら、静岡県や山梨県の富士山をきれいにするより、都心のゴミを拾ってくれた方が地域の人々は嬉しいだろう。

そもそも、IT ひいては企業や事業戦略と、ごみ拾いの関連性がよくわからない。更に、そういった活動をするために新聞広告などでアピールして莫大な広告費を使うくらいなら、サービスの質を向上させるなり、顧客が喜ぶことに予算を振り分けて欲しいと思う。

同じ環境へのアプローチでも納得できるケースもある。例えば、トヨタだ。ハイブリッド車が購入時に他の車より50万円高いとして、月のガソリン代を3分の2に節約できるとしよう。月に平均3万円のガソリン代を要するなら、年間で12万円の節約となる。

多くの人が車検を2~3回は行うことを考えると、車を買い替えるまでの間に最初の50万円分は確実ペイできる計算となる。こうなると、トヨタが環境に与えるインパクトも理解できるし、ハイブリッド車を所有する人が社会貢献をしている意識を持つと同時に、コスト的なメリットも享受できる。

最近は商品の価値が多少高価であっても、企業理念やコンセプトを重視してその商品を選ぶ消費者が出てきていると聞くが、日本ではそのような感覚をもった消費者はまだ少ないというのが私の感触だ。そういう意味でも、最初に挙げた3点をきちんと押さえた上で、自己満足に終始しない CSR を展開する必要があるだろう。

■想定する読者はその CSR サイトを見たいか?

CSR の定義や範囲が時代ともに変化するにつれ、Web サイトで CSR 情報を積極的に開示する企業が増えてきている。しかしながら、ステークホルダーの興味をひき、納得できるような作りになっているかというと、残念ながらそうではない。その理由のひとつとして、掲載内容を外部評価や報告書のガイドラインに準拠した結果、必要な情報を網羅することに注視するあまり、Web を利用するユーザーの視点が抜けてしまっていることが挙げられる。

これからの CSR サイトとしては、ユーザー視点のデザインや言葉遣い、ユーザーシナリオを意識したページ構成やナビゲーションなどの情報設計を心がけたい。また、掲示板などを活用し、ステークホルダーのニーズに応えた CSR 活動を行うなど、双方向のコミュニケーションを取り入れることも課題といえる。

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